
法人にとって、税務申告と納税のスケジュール管理は非常に重要です。法人を運営していると、1年に1回だけではなく、途中で「中間申告」や「予定納税」が必要になる場合があります。特に決算が黒字だった法人は、翌期の途中で納税が発生することもあり、資金繰りに大きな影響を及ぼすこともあります。中間申告には、法人税、所得税、消費税などありますが、今回は、法人税の「中間申告」についてわかりやすく解説します。
中間申告とは、事業年度の途中で行う法人税等の申告・納税のことです。通常、法人は決算が終了した後に1年分の所得を計算し、法人税等を申告・納付しますが、前期の法人税額が一定額を超える場合、翌期の途中でも納税義務が発生します。
特に以下の法人が対象となります。
前期の確定法人税額(地方税を含まず)が20万円超の場合、原則として中間申告が必要です。事業年度が12か月の法人であれば、開始日から6か月後の2か月以内(つまり、8か月目末日)までに中間申告書を提出し、納税を行います。
中間申告の方法には「予定申告方式」と「仮決算方式」に基づく方法の2種類があります。
最も一般的なのが予定申告です。これは、前期の法人税額を基準にして、単純に半分を支払うという方法です。
[計算式(予定申告)]
納税額=前年度法人税額÷前事業年度の月数×6か月
たとえば、前年度の法人税額が24万円だった場合
24万円÷12×6 = 12万円 ※100円未満切り捨て
これを中間申告時に納税します。
この方式は、前年度の業績をもとに計算されるため、事業に大きな変動がなければ比較的スムーズな計算が可能です。
また、中間申告が必要な法人には、税務署から「予定申告書」が送られてきます。税額が記載された申告書となっています。その納付書の税額を納付すれば完了です。注意点として、e-Taxで申告書を提出している場合は税務署から送付されません。e-Taxのメッセージボックスへ通知が入りますので、それを参考に納付書の作成と納税を行います。
もし事業年度の前半6か月分の収益・費用が確定している場合は、「仮決算」に基づいて中間申告することも可能です。この場合、実際に6か月間で得た所得をもとに法人税を計算します。
仮決算方式では、当期の6か月間の業績をもとに法人税額を試算し、その額を納付します。計算式は以下の通りです。
[計算式(仮決算)]
中間法人税額=仮決算ベースの課税所得×法人税率
この方式は、業績が大きく変動した場合に有効で、前年度の法人税額よりも納税額を抑えられる場合があります。一方、仮決算をすることで予定申告額よりも高くなってしまうこともあるため注意が必要です。
法人が中間申告をする際、以下のポイントに注意しましょう。
1.キャッシュフローへの影響
税額の支払いが事業資金に影響しないよう、事前に資金計画を立てることが重要です。
2. 予定納税額の適正化
事業に大きな変化があれば仮決算方式を選択し、適正な納税額を計算することで資金負担を軽減できます。
3.期限を守る
税務申告の期限を順守することで、延滞税や加算税などのペナルティを回避できます。
地方法人税(国税の一種)や地方税(県民税・事業税・市民税)の中間申告・納付は、法人税と連動しています。以下の税目について中間申告が必要になる場合があります。
これらも法人税と同様に、前期の納税額をもとに計算する「予定申告」と、実績に基づく「仮決算方式」が選べます。
地方税の細かい計算方法の違いが下記2つあります。
先に「前事業年度の月数」で除した後6倍する税目・・・法人税(地方法人税)、消費税、事業税(地方法人特別税)
計算式:納税額=前年度法人税額÷前事業年度の月数×6か月
先に6倍した後「前事業年度の月数」で除す税目・・・道府県民税、市町村民税
計算式:納税額=前年度法人税額×6か月÷前事業年度の月数
中間申告や予定納税を期限内に行わなかった場合、延滞税や加算税が課される可能性があります。法人の信用や資金繰りにも影響を与えるため、税務カレンダーをきちんと管理することが大切です。
法人の中間申告は、1年のうち複数回にわたって税金を納める必要がある仕組みです。特に中小企業にとっては資金繰りに直結するため、事前にスケジュールを立て、前期の決算が終わった段階で早めに確認しておきましょう。また、適切な計算方法を選択し、期限を守ることが重要です。特に、仮決算方式を活用することで事業変動への柔軟な対応が可能になります。事業の成長と安定した運営のために、税務戦略をしっかり立てましょう。
下記、ポイントのおさらいを載せておきます。
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