1人当たり1万円基準における交際費等について


1人当たり1万円基準における交際費等について

 令和6年の税制改正により、交際費等の範囲から除外される飲食費の金額基準が1人当たり5千円から1万円以下に引き上げられました。この改正は、企業の経費処理に大きな影響を与えるため、改正前との違いを理解し、適切な対応をすることが重要です。今回は、交際費等の1万円基準について解説します。

1. 概要

 飲食その他これに類する行為(飲食等)のために要する費用で1人当たり1万円以下などの適用条件を満たす場合は、「交際費」から除外することが出来ます。実務上は、当該基準をもとに「会議費」などの別の科目に区分する会社も多いです。

2. 1万円基準の適用条件

 改正後の1万円基準では、以下の条件を満たす場合に交際費から除外されます。

① 1人当たり1万円以下の飲食費であること

・飲食費の総額を参加人数で割り、1人当たりの金額が1万円以下であることが必要です。

・消費税の経理方式によって判定方法が異なり、税込経理なら税込金額、税抜経理なら税抜金額で判断されます。

② 社外の取引先が参加していること(社内飲食費は対象外)

・社外の取引先が参加していることが条件となります。

・社内の飲食費とは役員または従業員やその親族に対して接待を目的として支出した費用のことで、1万円基準の対象外です。

・取引先との接待や打ち合わせの際の飲食費が対象です。

③ 領収書や帳簿に必要事項を記載・保管していること

以下の事項を帳簿や領収書に記載し、保存する必要があります。

  • 飲食等のあった年月日
  • 飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者の氏名または名称
  • その者と会社の関係(取引先、仕入先など)
  • 飲食等に参加した者の数
  • 飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称および所在地

※贈答品、ゴルフや観劇、旅行、慰安などの催事に伴う飲食費は、1万円基準の適用対象外となります。

3. 実務上の注意点

 企業の経理処理において実務上の注意点は以下の通りです。

◇税込・税抜の判断

企業の消費税経理方式によって、判定基準が異なります。

  • 税込経理:税込価格で1万円以下かを判定
  • 税抜経理:税抜価格で1万円以下かを判定

◇一次会・二次会の扱い

  • 同じ店での飲食:合計金額で判定
  • 異なる店での飲食:それぞれ別々に判定

◇1万円を超えた場合の影響

1万円を超えた場合、全額が交際費として扱われるため、損金算入が制限される可能性があります。

◇記録の徹底

税務調査時に適用条件を満たしていることを証明するため、領収書や帳簿に飲食の目的・参加者情報を記載することが求められます。

4. 免税事業者への飲食費の支出を行った場合の対応

 税抜経理を採用している事業者の場合、インボイス制度にかかる特例の影響を受ける為、取り扱いに注意が必要です。免税事業者からの課税仕入れに係る経過措置により一部が課税仕入れとして認められますが、認められない範囲は本体価額に含まれてしまうためです。課税仕入れとして認められる割合は期間によって変わるため、免税事業者に飲食費の支出を行った場合、1人あたり1万円以下かどうかの判定は次のように扱います。

期間支払対価
R6.4.1~R8.9.3010,784円まで適用可能
R8.10.1~R11.9.3010,476円まで適用可能
R11.10.1~10,000円まで適用可能 ※経過措置終了

5. 適用時期

 本改正は、令和6年4月1日以後に支出する飲食費について適用されます。3月31日以前に飲食等の行為があり、カード決済などで4月1日以降に支払った飲食費は従前の5千円基準で判定されます。

6. まとめ

 令和6年の税制改正により、飲食費等が交際費から除かれる基準の適用範囲が拡大され、1人当たり1万円以下の飲食費が交際費から除外されるようになりました。企業は税務リスクを回避するために適切な経理処理を行い、帳簿管理を徹底することが重要です。この改正により、企業はより柔軟な経理処理が可能になり、接待の機会が多い企業にとっては税負担の軽減につながるでしょう。ただし、適用条件を満たさないと判定された場合は交際費として扱われるため、慎重な対応が必要です。


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