
個人の所得にはその金額に応じて、事業者が給与や報酬からあらかじめ差し引く源泉所得税がかかります。事業者が源泉徴収した所得税は、年末調整で各従業員の控除内容などを加味したうえで確定されます。今回は、源泉所得税の仕訳方法について説明します。
租税公課とは、税金や各公共団体に納める公的な目的で支払った経費を指します。国税や地方税などの「租税」と、国や地方公共団体、その他公共団体に納める罰金や会費に当たる「公課」を示す費用の勘定科目です。
租税の例 | 公課の例 |
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・事業税 ・印紙税 ・登録免許税 ・税込方式で仕訳する場合の消費税 ・固定資産税 |
・各種証明書の発行費用 ・行政サービスの手数料 ・同業者団体などの会費、組合費、賦課金 ・など |
今回の題目である源泉所得税は税金ではありますが、勘定科目として「租税公課」を使用しません。これは、源泉所得税は経費としては認められないためです。給与や報酬などから天引きした所得税は、本来、給与を受け取った本人が納めるべき税金を事業主が一時的に預かり、それを代行納付するものです。
源泉所得税も租税公課ですが、経費計上することはできません。経費計上できないから会計処理が必要ないのではなく、現金や預金などから支出は発生しているため、何らかの会計処理は必要です。その場合に使用する勘定科目が「預り金」です。源泉所得税といえば、一番身近なのが給与から天引きされる所得税です。給与所得税以外にも、源泉徴収が必要な報酬・料金があります。
給与所得税は所得税の納付手段のひとつで、毎月支払う給与から所得税を納めるために、支払額から一定額を差し引き一時的に源泉所得税を企業が預かり納付する仕組みです。事業者には納税が義務付けられているため、毎月または半年に一度、国に納付する必要があります。
給与から源泉徴収する際に仕訳をしなければなりませんが、タイミングやケースによって仕訳方法が異なるため下記で詳しく説明します。今回は給与から天引きされる源泉所得税に関する3つの場合について紹介します。
毎月の給与支給時に、従業員から徴収した源泉所得税を「預り金」として処理します。また、給与から控除する社会保険料についても「預り金」で処理が必要です。
借方 | 貸方 |
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給与 300,000円 | 現預金 240,600円 |
預り金(社会保険料) 53,000円 | |
預り金(源泉所得税) 6,400円 |
原則として、源泉所得税は給与支払月の翌月10日までに税務署へ納付します。納付時も「預り金」で仕訳を行います。
借方 | 貸方 |
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預り金(源泉所得税) 6,400円 | 現預金 6,400円 |
年末調整では、1年分の源泉徴収額と実際の所得税額の差額を精算します。還付または追加徴収が発生する場合があります。
還付金10,000円が発生し、給与に加算して支払う場合の仕訳例:
借方 | 貸方 |
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給与 300,000円 | 現預金 250,600円 |
預り金(社会保険料) 53,000円 | |
預り金(源泉所得税) 6,400円 | |
預り金(源泉所得税) 10,000円 |
追加徴収金10,000円を給与から徴収する場合の仕訳例:
借方 | 貸方 |
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給与 300,000円 | 現預金 230,600円 |
預り金(社会保険料) 53,000円 | |
預り金(源泉所得税) 6,400円 | |
預り金(源泉所得税) 10,000円 |
源泉徴収義務者に該当する場合、必ず所得税の源泉徴収と納付を行わなければいけません。源泉徴収を怠り納付を行わなかった場合、「不納付加算税」や「延滞税」といったペナルティを受けることがあります。経理担当者は期限内に正しく納付を行い、源泉漏れのないように注意しましょう。
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