社会保険料の計上時期について


毎月、給与から控除している社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)は、会社と従業員で約半分ずつ負担をしています。会社負担分は「法定福利費」、従業員負担分は「預り金」として会計処理することになります。今回は、社会保険料の税務上の未払計上ついて説明します。

社会保険料とは

社会保険料は、給与の受給者が特定の要件を満たした場合に、加入する保険になります。詳しい加入条件等の説明は本題からずれてしまうため控えさせていただきます。社会保険料は、当月の給与や役員報酬から控除し、預かった従業員負担分の社会保険料と会社負担の社会保険料を合わせて、翌月末に納付しなければなりません。例えば、6月の給与から天引きした社会保険料の場合、従業員負担と会社負担と合わせて7月末に納付するという流れです。

社会保険料を控除するタイミング

上項でも説明しましたが、従業員が負担する社会保険料は、会社がその従業員に支払う給与から毎月控除する必要があります。この控除するタイミングは会社ごとに異なります。徴収するタイミングには、「当月徴収」と「翌月徴収」の2種類の方法があります。言葉の通り、当月に徴収するのか、翌月に徴収するのかだけの違いです。
イメージしやすいように次の例で具体的に説明します。
例)給与締め日:25日〆、支払日:当月31日支払い、社会保険加入日:4/20
【当月徴収】
4月分の社会保険料 ⇒ 4/30支給の給与から徴収
5月分の社会保険料 ⇒ 5/31支給の給与から徴収
例)給与締め日:25日〆、支払日:翌月31日支払い、社会保険加入日:4/20
【翌月徴収】
4月分の社会保険料 ⇒ 5/31支給の給与から徴収
5月分の社会保険料 ⇒ 6/30支給の給与から徴収
簡単に説明すると、当月徴収とは、今月分の社会保険料を今月支給する給与から控除します。翌月徴収とは、今月分の社会保険料を翌月支給する給与から控除するということです。

決算月に未払計上で節税

社会保険料の中で、会社負担分については、法定福利費(経費)として扱われ損金算入について下記のように規定されています。
「当該保険料等の額の計算の対象となった月の末日の属する事業年度の損金の額に算入することができる」(法人税基本通達9-3-2)
つまり、決算月が4月であれば、4月分の給与や役員報酬に係る会社負担分の社会保険料の金額については、翌月5月末の支払い日まで持ち越さなくても、4月分の経費として未払計上することができるということです。ただし、従業員負担分の社会保険料は未払計上することができず、原則、給与支払い時に徴収することになります。
翌月徴収を採用し、かつ多くの従業員がいる会社では、1人1人の会社負担分の社会保険料を当期に経費として計上できれば、大きく減税することができるでしょう。

未払分の社会保険料の仕訳方法

翌月徴収を採用している場合、当月分は翌月末に支払います。その場合、従業員負担分と会社負担分を翌月の納付日に「法定福利費」として会社負担分の社会保険料の計上を行います。
しかし、会社負担分については、当月分を経費として計上することができます。仕訳方法を以下のようになります。
【当月末:決算月】月末   ※社会保険料のみの仕訳例です。

借方 貸方
法定福利費 ※※ 未払費用
(法人負担分)
※※

【翌月末:納付時】

借方 貸方
未払費用
(法人負担分)
※※ 現金預金 ※※
預り金
(従業員負担分)
※※

上記仕訳は、従業員から預かった社会保険料を取り崩しています。
決算月に、上記のような未払計上の仕訳方法をとることで当期の経費にすることができますので、節税効果が見込めるというわけです

賞与に係る社会保険料について

通常でしたら、賞与からも社会保険料を控除しますが、賞与を支給した月の途中で退職される場合は、社会保険料は発生しませんので、保険料を控除する必要はありません。その前提のもと、賞与に係る社会保険料を考えてみましょう。会社が利益を出し、従業員に臨時的に決算賞与の支給を決定した場合、支給が決算月をまたぐケースもあるでしょう。そのようなケースでは、賞与と同様に社会保険料も未払計上した場合であっても、決算日の時点では保険料の納付義務が確定しているとはいえないため、損金算入は認められません。決算賞与に係る社会保険料の支払義務は、実際に賞与の支給があった末日におけるその従業員の在籍の事実があって確定するものとなります。つまり、未払計上した賞与にかかる社会保険料については、実際に賞与の支払をした月末でないと損金算入することができないということです。

まとめ

社会保険料を計上するかどうかで会社の利益、税金に大きく影響を及ぼすことがあります。給与や社会保険料を支給時に費用処理をしている会社は多いと思います。しかし、その場合でも上述の節税効果を発揮するためには、決算時に未払い計上することになりますので経理処理には留意が必要です。


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