中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)の活用で節税しよう


中小企業倒産防止共済制度は、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐために創設された制度です。共済への掛金は法人の損金や個人事業主の必要経費として扱うことができるため、節税効果があるといわれています。今回は中小企業倒産防止共済制度について説明します。

中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)の概要

倒産防止共済とは、取引先の倒産によって連鎖的に中小企業が倒産または経営難に陥らないようにする共済制度です。正式な名称は「中小企業倒産防止共済」ですが、「経営セーフティ共済」とも呼ばれます(以後、経営セーフティ共済と表記します)。法人版の保険と考えればイメージしやすいかと思います。
運営は独立行政法人中小企業基盤整備機構がしており、長期間の安定した運用が見込めます。

経営セーフティ共済のメリット

主なメリットとして以下の点が考えられます。
① 多くの中小企業が加入できる仕組みになっている
② 取引先から債権を回収することが不可能になった場合に貸付が受けられる
③ その他の理由で資金が必要になった際にも無担保・低金利での貸付が受けられる
④ 掛金は全額損金算入可能で節税効果が期待できる
⑤ 掛金の額を自由に設定できる
⑥ 40カ月以上加入していれば掛金が全額戻ってくる
⑦ 解約しても再加入が可能である
これらのメリットについて一つずつ説明します。

メリット①:多くの中小企業が加入できる仕組みになっている
加入資格には、「1年以上継続して事業を行っている会社、個人事業主、一定の組合」の内、次の表の「出資金または出資額」または「常時使用する従業員数」のいずれかの条件に当てはまる必要があります。
加入条件の内容は、大企業は除かれ中小企業を保護するという制度の目的を達成するためのものです。

業種 資本金の額または出資の総額 常時使用する従業員数
製造業、建設業、運輸業その他の業種 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下
ゴム製品製造業 3億円以下 900人以下
ソフトウェア業or情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
旅館業 5,000万円以下 200人以下

メリット②:取引先から債権を回収することが不可能になった場合に貸付が受けられる
共済金の上限額は、掛金総額の10倍までです。掛金総額の上限が800万円なので、共済金の上限額は最大で8,000万円ということになります。 無担保と無利子で受けられます。
ただし、取引先の倒産した場合などは、共済金は無利子である代わりに、共済金の1/10の掛金が控除されてしまいます。例えば、8,000万円共済金を受け取った場合、800万円(8,000万円×10分の1)の掛金がなかったことにされてしまうため、相当な理由がない限り共済金を選択するよりも、後述で説明する一時貸付金制度を利用した方が得策といえます。

メリット③:その他の理由で資金が必要になった際にも無担保・低金利での貸付が受けられる
この制度には「一時貸付金」というものがあります。急な資金調達が難しい場合などに、臨時的資金として、解約金の95%を上限に、無担保・保証人なし・低金利(年利0.9%)で貸付を受けられます。
但し、返済は1年以内での一括返済が必要です。1年以内に返済できない場合、違約金(年14.6%)が課せられる上に、返済期限(借入後1年)から5ヶ月を経過しても返済出来ない場合には、掛金から貸付金と違約金の額が差し引かれることなります。返済に向けた経営計画をしっかりと立てましょう。

メリット④:掛金は全額損金算入可能で節税効果が期待できる
セーフティ共済の掛金は全額損金算入できます。1年間の前払い制度もあり、事業年度末に向こう1年分を前納した場合でもその掛金を全額損金算入できるため、一時的な節税が期待できるわけです。

メリット⑤:掛金の額を自由に設定できる
掛金は毎月最低5千円~最高20万円、年間にして6万円~240万円までとなっています。
範囲内であれば、自由に設定できるため、少ない掛金から開始し、後々増額することも可能ですし、キャッシュフローが厳しい際は特に罰則もなく減額、掛け止めも可能です。

メリット⑥: 40カ月以上加入していれば掛金が全額戻ってくる
納付月が12ヶ月以上の加入者は、いつでも解約することができます。掛金に対して100%の解約手当金を受取れるのは「40ヶ月以上」からです。つまり、40ヶ月以上納付しないと損をすることになります。
ただし、40ヶ月未満でも、解約手当金の払い戻し率は高く設定されています。

メリット⑦:解約しても再加入が可能である
中小企業倒産防止共済は、一旦解約しても、加入条件を充たしさえすれば、再び加入し直すことができます。
ただし、逆にデメリットもあります。倒産防止共済を解約してから2年間は、倒産防止共済に再加入しても、掛金が損金算入できなくなりますので、解約には慎重に判断しましょう。(令和6年10月以降に解約されるものから適用)

注意点

セーフティ共済を活用した最大の節税効果を発揮するためには、ポイントが下記2点あります。

ポイント①:年800万円超えの所得が見込める場合の事業年度に掛金を支払う
法人税は、資本金1億円以下の普通法人の場合、所得が年800万円以下の金額には15%、超える金額には23.2%の税率がかかります。法人事業税も800万円を境目に税率が大きく変わります。800万円を超える所得を抑えることによって節税効果を高めることが出来ます。
なお、個人事業主は所得税の税率による為、ボーダーラインが違う点にはご留意下さい。

ポイント②:解約手当金を念頭に対策を考える必要がある
掛金額は最大800万円までとなっているため、解約手当金最大800万円を受け取る年は、所得が跳ね上がることになり、法人税があがってしまう可能性があります。設備投資を行うなど解約年の所得を抑える計画を立てておくことが大事です。また、赤字補填なども可能なため、中途解約も一つの手です。
なお、個人事業主は累進課税のため、まとまった解約手当金を受け取ると所得税の上がり幅が大きくなり、法人よりも使い勝手が悪くなる傾向にあります。

まとめ

経営セーフティ共済は節税だけでなく、資金繰りの計画の中でも活用することが出来ます。現在の経営状況を見極め、将来の事業計画も立てた上で利用の是非及び掛金の設定額を検討していただければと思います。


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