消費税の課税区分の判定について


税務調査では消費税の申告が正しく行われているかも確認されます。当社のブログ記事の「【消費税】非課税と不課税と免税の違い」で消費税の違いを説明しておりますが、その中から消費税の課税区分の判定を間違えやすい取引をピックアップし、他の事例も加えて紹介します。

消費税区分について

消費税には、消費税が掛けられている「課税取引」、課税取引とならない「不課税取引」、課税取引となるものの消費税の性質になじまないもの・社会政策上の配慮により特別に課税取引として扱わない「非課税取引」があります。

役員報酬・給与・雑給・派遣料

「事業」として役務の提供を行っているかどうかが判定基準となります。
雇用契約を結び労務の対価として支給される労務費は、事業として役務の提供を行っているとは言えないため「不課税取引」となります。一方で、派遣料は派遣元の会社と派遣先の会社が派遣契約を結び、派遣元の事業として役務の提供を行うことになるため「課税取引」に該当します。

司法書士報酬や車検費用

取引の中で、本来自分が負担するべき費用を相手が立替払いし、報酬と共に請求される場合があります。その場合は消費税区分を個別に判断しなければなりません。特に司法書士報酬や車検費用の支払の中には登録免許税や自動車重量税など、税金や公的機関への支払が含まれることがあります。これらには「不課税取引」や「非課税取引」が多い為、請求額の内容を確認するようにしましょう。

軽油

軽油を入れた際に支払う金額の中には軽油本体の料金と軽油取引税(軽油税)が含まれています。軽油本体には消費税が掛かっており「課税取引」として処理しますが、軽油税には消費税は掛けられていない為「不課税取引」として処理する必要があります。軽油税はその言葉通り税金の一種であり、税金に対しては税金を課さないという原則が有るためです。軽油本体の金額と軽油税を区分して処理しましょう。

医薬品・健康診断・医療費

公的医療保険が適用される医療費や診療代、医薬品などは「非課税取引」です。原則的には課税取引の要件に該当していますが、社会政策上の配慮により消費税は課税されていません。一方で、保険適用外である健康診断や美容整形などの自由診療、医師が作成する紹介状などの文書料は「課税取引」となります。

通勤手当

従業員等へ支給する通勤手当は原則「課税取引」となります。例外として、通勤するために通常必要であると認められる範囲を超えて支給していた場合は、通勤手当ではなく給与として取り扱われることになり、既に述べたように「不課税取引」となります。よく間違えやすいのが、所得税が非課税であっても消費税では課税となる点です。消費税について記載された領収証などもなく、課税と不課税の区分を間違えやすいポイントですので注意してください。

旅費交通費・出張日当

旅費規程に基づき支給された日当などは、通常必要であると認められる範囲内であれば消費税の「課税取引」となります。旅費規程での支給には実費精算的な意味合いがあるため、その領収証等が無くても課税取引として扱うことを特別に認められています。
また、ホテル代などの宿泊費には宿泊税が含まれていることがあります。宿泊税を導入しているのは一部の自治体のみですが、宿泊税が記載されている場合は宿泊費本体とは分けて処理する必要があります。これも税金の一種であるため消費税は「不課税取引」となっています。

交際費関連

香典等の慶弔費は、一般的に対価として支払われるものではないため「不課税取引」となります。
また、商品券やギフトカードなどを購入した費用は「非課税取引」にあたります。また、ゴルフ代にはゴルフ場利用税が含まれている場合があります。これも税金の一種で有るため「不課税取引」となっています。

会費

会費という名目でお金を支払っている場合、その取引の内容により消費税の処理が変わる為注意が必要です。
例えば、ある団体に毎月の会費を支払っているものの対価となる商品やサービスの提供を受けていない場合では「不課税取引」となります。逆に懇親会費など、対価となる飲食の提供を受けている場合は「課税取引」となります。
これらの明確な線引きは難しい為、領収証等に消費税についての記載が無い場合は不課税取引とするか、専門家に相談するのが無難と言えます。

支払手数料

クレジットカードの決済手数料に注意が必要です。基本的には有価証券や支払手段の譲渡として「非課税取引」となりますが、一部の取引では決済代行の為の役務の提供として「課税取引」となる場合があります。クレジットカード明細等を確認し、消費税についての記載がある場合はその記載に従って処理されるようご注意ください。

土地・建物に関する取引

土地の販売取引は「非課税取引」となります。土地は利用しても消費して価値が減ることは無い為、消費税の性質になじまないものとされています。一方、建物は「課税取引」となります。土地と建物を同時に売買した場合、契約書を確認し記載された通りに売買金額の按分をする必要があります。土地と建物の区分がない場合は、固定資産税評価額などをもとに按分計算しなければなりません。
次に、土地や居住用の住宅の貸付による取引は、原則として「非課税取引」となります。
ただし、ウィークリーマンションなど1ヶ月未満の賃貸期間の場合は「課税取引」となります。駐車場の貸付も、更地を借りて駐車場として利用している場合を除き、駐車場施設の利用(サービスの利用)として「課税取引」になります。

消費税率にも注意

消費税率にも意識を向け、軽減税率8%と標準税率10%の区分も忘れずに行いましょう。令和元年10月1日より前の契約に基づき支払ったものには旧税率が含まれる場合もあります。
さらに、令和5年10月1日からインボイス制度が開始されています。取引先が登録事業者なのか非登録事業者なのかによっても消費税の仕入れ税額控除として扱われる範囲が変わってくることにも注意しましょう。

まとめ

税務調査では、必ず消費税申告の確認をされることになるでしょう。後で、すべて見直すのはより時間と労力を割くことになり大変です。日々の会計処理を正しく行うよう心がけましょう。


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