輸出取引による消費税の仕入税額の還付手続きについて


輸出取引を行った場合には消費税が免除されます。消費税は国内での取引に対して課税され、最終的に消費者が負担することになります。事業者は消費者から預かった消費税を納付しなくてはいけません。しかし、輸出取引は海外で消費されるため、国内で消費される国内取引ではないため消費税が課税されません。そのため、消費者から預かる消費税はないため、仕入れに支払った消費税の還付を受けることができます。輸出取引の消費税の仕入税額の還付の仕組みや手続きを説明していきます。

還付される消費税とは

下記例のように、通常の消費税の納税額の計算は、預かった消費税から仕入れに支払った消費税を差し引いて、納税額を算出しています。

例)
預かった消費税(3,000円)- 支払った消費税(1,000円) = 納める消費税(2,000円)

還付される消費税の場合は下記例のようになります。
例えば、商品を仕入れて、消費税が1,000円かかった場合。
仕入れた商品は輸出取引として海外に出荷すると売上にかかる消費税はありません。この取引において、仕入時に支払った消費税と売上にかかる消費税との差額でマイナスが生じます。

預かった消費税 (0円) ― 支払った消費税 (1,000円) = 還付される消費税 (-1,000円)

この場合、事業者は支払った消費税の還付を受けることができます。つまり、支払った消費税が事業者に戻ってくることになります。

還付できるのは課税事業者のみ

還付を受けるための申告書を提出できるのは、以下のような課税事業者です。
① 課税売上高が前々年(基準期間)に1,000万円を超える事業者。
② 課税売上高が特定期間に1,000万円を超える事業者。
※特定期間とは、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間をいいます。
※特定期間中の「課税売上高」が1,000万円を超える場合に加え、「給与等の支払額」が1,000万円を超える場合のどちらにも該当する事業者は来期から課税事業者となります。
③ 課税事業者となることを選択した事業者(消費税課税事業者選択届出書を提出した事業者)。
④ 基準期間がない法人で、その事業年度の開始時に資本金の額または出資の金額が1,000万円以上の事業者。

還付手続きを行う前に、課税事業者になるための提出書類がある

上記①②の条件を満たす場合は、既に提出済みの場合を除いて、消費税の課税事業者になったことを税務署に報告するため、「消費税課税事業者届出書」を提出します。
上記③の場合は、事業者が任意で消費税課税事業者となることを選択するため、「消費税課税事業者選択届出書」を提出します。③の場合、最低2年間は課税事業者として継続しなければならず、免税事業者へ戻ることはできません。

簡易課税事業者は消費税の還付を受けられない

簡易課税は、売り上げとして預かった消費税に対し、決まったみなし仕入れ率をかけて簡易的に控除額を計算し、預かった消費税から控除して残った納付額を納付する課税方式です。
この方式を採用している事業者は納税額の削減が可能な場合がありますが、その代わりに消費税の還付を受けることができません。
簡易課税を選ぶ利点は、仕入れに対する消費税の控除を簡単に行えることで手間を省くことができるという点です。その反面、還付制度を利用することで仕入れに支払った消費税を返してもらうことができるメリットを失うことになります。つまり、簡易課税を選択する場合は、手続きが簡単になる一方で還付を受ける機会を失うことになるというトレードオフがあります。事業者は自身の経営状況やニーズに合わせて、原則課税事業者、簡易課税事業者、免税事業者のどちらか適切な課税方式を選択する必要があります。

消費税還付の手続きはいつまでに行うか

消費税の還付手続きは、通常の消費税納税時と同様に、決算後2ヵ月以内に消費税の申告書を提出して行います。ただし、還付を受ける場合は、通常の申告書に加えて「還付申告明細書」を作成して提出する必要があります。
還付申告明細書では、消費税が還付される理由や輸出による還付の場合は輸出先の情報(名称、住所、取引金額など)などを詳細に記載します。これにより、税務署は還付の対象や金額を正確に判断することができます。
通常の申告書と還付申告明細書を提出することで、消費税還付の手続きが完了し、適切な還付が行われます。
受け取り方法には、全国の金融機関またはゆうちょ銀行への口座振り込みの方法があります。

まとめ

消費税還付を受けるためには、簡易課税でない、課税事業者の対象となることがポイントです。
今後の輸出ビジネスを手掛ける事業者にとって事業運営にお役立てになれる情報となれば幸いです。


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