退職金


退職金は労働法などで支給を義務付けられているわけでは無いので、支払うかどうかはそれぞれの会社での判断によることになります。中小企業では支払われない会社も多くありますが、退職金の規程を策定し支給を保証することで、従業員の求人を出した際に応募の増加が見込めますし、勤労意欲の向上にも寄与します。会社の負担は増えてしまいますが、資金に余裕があれば導入を検討してみるのもよいでしょう。
本稿ではそんな退職金に関わる税務的な面を解説していきます。

退職金は会計と税務で取り扱いが違う

会計上は退職給付引当金等、将来の支払に備えて費用や引当金を計上することが認められますが、税務上では引当金を積み立てる為の費用は損金として認められず、実際に支払った際に全額を損金算入することになります。
ただし「中小企業退職金共済制度」など一定の方法で積み立てるものについては、その支払時に損金算入することが可能になります。将来の支給時まで考えるとトータルでの損金算入額は変わりませんが、毎年算入することが出来れば税負担の軽減効果を早めに享受することになります。支給時の損益に大きく影響を与えることも無くなりますので、対外的に安定した業績を示したい場合にも役立つでしょう。(会計のみ退職給付引当金を計上していくことも出来ますが計算が複雑で事務処理の手間がかかります。)

退職金規程を定めておく

退職金を支給するために、必ずしも退職金規程を定めておく必要はありません。逆に規程を定めてしまうと、本来自由であるはずの退職金の支給が義務付けられることになるため、作成には注意を払わなければなりません。退職金規程は就業規則の一部として法的拘束力を持つためです。
とはいえ、明文化されないまま支給すると従業員との間に無用のトラブルが発生する可能性や、退職金ではなく給与として是正指導される危険性も出てきます。一般的な退職金の範疇を超えなければ退職金と認められるケースが多いようですが、明確な基準はないため心配ないとも言い切れません。
もし給与として扱われると、退職所得控除が適用されず受給者側で多額の税金が発生しますし、社会保険料の対象にもなってしまうため受給側だけでなく支給側にも負担が発生してしまいます。
中小企業退職金共済制度などを利用する場合には無くても問題ありませんが、制度を利用せずに退職金の支払いを考えておられる場合は退職金規程を定めておくと良いでしょう。

役員の場合は株主総会での決議が必要

退職金の受給者が法人の役員であれば役員退職慰労金として取り扱うことになります。
一般の退職金とは違いますのでその金額については退職金規程によらず、定款若しくは株主総会の決議により決定されることになります。一般的には、株主総会で支給することを決議し、詳細は取締役会に一任されることが多いようです。
法律で上限が定められている訳ではありませんが、税務署の調査で、同規模の同業他社との比較や社会通念に照らすと過大であると判断された場合には、過大とされた部分については損金として認められません。また、退職金の時と同様に給与所得として取り扱われてしまい、受給側の所得税や社会保険の対象となってしまいます。
こちらも、退職慰労金規程を策定しておけば、社内トラブルの回避だけでなく、株主・その他の社外関係者へ説明をする必要がある場合にも簡潔に行うことが出来ます。

ストックオプション

退職金に類似するものとして、将来の一定の期間に自社の株式を購入する権利を付与するストックオプションという制度があります。あらかじめ定めておいた購入価額と権利行使時の株価との差額で利益を生じる仕組みです。
利益が業績と連動するため、より勤労意欲を向上させるものとして人気が広がっています。
退職金制度を廃止してストックオプションを導入する会社も増えてきましたが、利益を確定させるには株式を売却する必要があるため、基本的には上場企業など株式の売買が自由に出来る企業向けの制度です。また、課税関係も複雑になるため、導入を検討する場合は顧問税理士など専門家にご相談下さい。


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