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短期前払費用の特例について(法人向け)

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前払費用と前払金の違いとは

前払費用 前払金
内容 サービスに支払った費用のうち提供を受けていない部分 サービスやモノに支払った費用のすべて
具体的なサービス 家賃や保険料(火災・自動車・リースなど)。
継続的にサービスを受けるもの
商品や原材料、イベント参加など単発でサービスを受けるもの
計上日 来期 事業年度内

そもそも前払費用とは、法人が一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち、まだ役務の提供を受けていないものに対応するものをいいます。
前払費用は、原則として、支出した時に資産に計上し、役務の提供を受けた時に損金の額に算入すべきものです。
両者の大きな違いは、「対価の対象に継続性があるかないか」です。また、前払費用は、「サービス」に限定しており、前払金は、サービスだけでなく、「モノ」なども対象になっていることから、対象の範囲の広さにも違いもあります。

前払費用と短期前払費用の違い

前払費用は、支払った日付でいったん「資産」(科目は「前払費用」)に計上し、その年にサービスを受けた期間の分だけ経費に振り替えていくのが原則です。
前払費用であっても、「支出日から1年以内にサービス期間が終了する場合」は、「短期前払費用」といいます。
また、その短期前払費用である、1年以内のサービス費用全額を事業年度内の損金に算入することが特例として認められています。これを「短期前払費用の特例」といいます。
全額を損金に算入することが出来れば、状況によりますが、法人税の節税につながり、帳簿付けの負担の軽減になります。
ただし、短期前払費用に該当するかどうかは、しっかりと調べる必要があるので慎重に行いましょう。

短期前払費用の特例を適用するための注意点

◎「継続的に」「等質等量」のサービスを受けるもの
① 支払日から1年以内(短期)にサービスの提供を受けるものであること。
具体的には、当年4月~翌年3月分の料金支払いを当年2月に支払いをしていても、翌年3月分が1年以上先であるため、全額適用されません。また、短期前払費用は、支払先との契約に基づいていなければなりません。支払先と月払いの契約をしているにもかかわらず、独断で1年分支払うことは認められません。
② 翌期以降も継続して特例を適用していること。
事業年度によって損金に算入したりしなかったりすることはできません。
③ 一定の契約に基づいて、継続的な役務の提供であること。

短期前払費用の特例を適用できる範囲

「役務の提供を受けるために支出した費用」に限定されます。
短期前払費用の特例を適用できる具体例として、
① 土地や建物の賃料
② システムのリース料
③ サービス使用料(サブスクリプション料など)
④ 火災保険料
⑤ 雑誌や新聞の年間購読料(電子版に限る)

短期前払費用の特例を適用できない具体例
雑誌や新聞の年間購読料(電子版でない場合)

短期前払費用の仕訳方法

仕訳例:3月決算の法人が10月に1年契約の保険料として105,000円前払いした。

・短期前払費用の特例を適用しない場合

保険料支払い時

借方 貸方
保険料 105,000円 普通預金 105,000円

決算時 翌4月~10月の7ヵ月分を前払費用に振替

借方 貸方
前払費用 61,250円 保険料 61,250円

前払いした7ヵ月分は翌期分に相当するため、前払費用に振替し、期をまたぎます。

翌期首 前払費用を当期の費用に振替

借方 貸方
保険料 61,250円 前払費用 61,250円

決算時に前払費用に振替した分を改めて当期分の保険料に振替しなくてはいけません。

・短期前払費用の特例を適用する場合

保険料支払い時

借方 貸方
保険料 105,000円 普通預金 105,000円

上記のように、特例を使用しない場合、4つの仕訳作業が必要ですが、特例を使用すると1つの仕訳で完了し、作業の負担軽減につながります。

まとめ

短期前払費用の利点は、支払いが済んでいれば、翌事業年度の費用も当事業年度に損金に算入できるため、法人税の課税対象額が小さくできることができます。これにより、例年よりも多く収益が上がった事業年度の法人税の課税負担を軽減することができるでしょう。また、仕訳の作業も効率が上がることになります。

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