新規開業された際には、損益や資産負債の状況を把握する為に帳簿をつけて管理していくことが大切です。事業を管理し経営判断に役立てる為の会計を管理会計と呼び、現金出納帳が非常に重要な役割を果たします。その作成の為には領収書や売上伝票、通帳の入出金票などをまとめ、1つ1つの取引内容を記載していくことが必要となります。
現金出納帳とは
現金出納帳(げんきんすいとうちょう)は、会計の帳簿の一つで、現金の入出金を記録するものです。この帳簿は決算報告書には含まれませんが、事業者にとって非常に重要です。なぜなら、実際の現金の残高と帳簿上の残高が完全に一致することが会計上必要だからです。
正確に現金出納帳を付けると、現金の残高は実際の現金の金額と必ず一致します。もし一致していない場合、帳簿に抜けや誤った入出金がある可能性があります。この場合、領収書などを確認して帳簿と比較し、間違っている箇所を見つける必要があります。その際に現金出納帳は非常に役立ちます。
特に現金をよく扱う小売店や飲食店などの店舗では、現金出納帳がお金の管理面で必須と言えます。この帳簿をきちんと管理することで、現金の流れを把握し、正確な財務情報を得ることができます。それによって、経営を健全に保ち、不正や横領を予防することも可能です。
現金出納帳の記帳の仕方
現金出納帳の最初の行には、「摘要」欄に「前年より繰越」と記載します。この行には前年末の現金残高を「現金残高」欄に記入します。前年末の現金には、小切手や普通為替証書など、他から受け取ったものも含まれます。
年の途中で開業した場合は、最初の行には「摘要」欄に「元入金」と記載します。開業時に事業用資金として現金を持ち込んだ金額を「現金残高」欄に記入します。
現金による売上は、原則として一つの取引ごとに相手方の名称、品名、数量、単価を「摘要」欄に、金額を「現金売上」欄に記入します。
これ以降の記載例は、小売業や卸売業を営む方を想定しています。
出金処理には、原則として一つの取引ごとに相手方の名称、品名、数量、単価を「摘要」欄に、金額を「現金仕入」欄に記入します。
青色申告の特別控除が受けられるメリットもある
記帳をしっかり管理していくことは、最高55万円(一定の要件を満たす場合は最高65万円)または最高10万円が所得から控除されるという青色申告特別控除が受けられるメリットもあります。
控除の適用があると、所得金額から最高65万円を差し引いた金額に税金が課されるため、納税者にとって節税になります。
▪青色申告の適用を受けるための要件
① 不動産所得または、事業所得、山林所得を生ずべき事業を行っていることが要件です。
② 原則、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出しなければいけません。
※新規事業を開始した場合(当年の1月16日以降~)→業務を開始した日から2か月以内に所轄の税務署に提出しなければいけません。
▪特別控除(最高55万円)を適用するための要件
上記の青色申告の適用要件に加え、
① 不動産所得または、事業所得を生ずる事業を行っていることが要件です。(山林所得は除く)
② 複式簿記で記帳していること。
③ ②で作成した、貸借対照表と損益計算書を確定申告時に添付していること。
▪特別控除(最高65万円)を適用するための要件
上記、最高55万円控除の適用要件に加え、e-taxによる申告または電子帳簿保存を行っていることです。
▪特別控除(最高10万円)を適用するための要件
上記、最高55万円控除の適用要件に入らない場合でも、青色申告者は最高10万円の控除を適用できます。
例えば、単式簿記(簡易簿記)による記帳を行っている場合、現金出納帳、買掛帳、売掛帳、固定資産台帳、経費帳などから決算書を作成し青色申告をすることは可能ですが、特別控除は最高10万円までとなります。
注意点:青色申告の中でも、10万円を超える特別控除を受けたい場合は、現金出納帳を含む複数の帳簿を作成する必要があります。現金出納帳は特に重要で、これを作成しないと税務署による税務調査で問題になる可能性があります。税務署によって指摘された場合、特別控除が認められなくなり、追加の税金を支払う必要が出てきます。そのため、正確な帳簿を作成し、各種適用要件を満たすことが重要です。
帳簿書類の保存義務
事業者が保存しておかなければいけいない帳簿や書類は下の表に表示されています。
事業所得、不動産所得又は山林所得を得る全ての方(所得税及び復興特別所得税の申告が不要な方も含む)は、所得税法により、帳簿を備え、これらの業務に関する取引を所定の方法で記録し、一定期間保存することが義務付けられています。
帳簿を簡単に作成するための様々なツールを活用しよう
帳簿は基本的に全ての取引について記載していく必要があるため、その作成の労力は多大なものとなります。
本記事で述べた通り帳簿作成は重要ですが、そればかりに手間を取られ本業が疎かになるのは本末転倒です。
効率的な方法を取り入れることや、デジタルツールを活用することでその負担軽減を図れます。
会計ソフトウェアを使えば自動計算やデータ整理ができます。正確で迅速な帳簿管理が可能となり手間を大幅に削減することが期待できます。
税理士事務所など、プロに記帳代行を依頼することもひとつの手かもしれません。