棚卸とは、会社や工場、商店などで保有している商品や原材料の在庫を数え、数量や品質などを確認する作業のことです。棚卸をすることで、企業が保有する資産の状況を評価し、会計上の金額を把握します。
会計上、企業の決算時にどのような成果を出したのか表示する義務があり、その成果の代表例といえるのが利益です。棚卸は、会社の1年間の利益を確定させるために必要な作業で少なくとも年に1度、決算時期に行わなければなりません。
棚卸の確認対象になるものは、商品、製品の他、原材料や消耗品などです。これらは会社の資産に該当するため棚卸資産として正確な数量、状態を確認する必要があります。
●棚卸資産とは?
棚卸資産とは、販売目的で仕入れた商品や加工に必要な部品など、事業活動のために保有している資産のことで、いわゆる在庫と呼ばれているものです。事業活動において必要とされる事務用品や消耗品なども棚卸資産に該当します。
棚卸資産は大きく5つに分類できます。
・商品・製品:販売目的で仕入れた商品または製造した製品
・半製品:すでに加工を終えた貯蔵中の物で販売できる状態にあるもの
・仕掛品:製品・半製品の生産のため現に仕掛中のもの
・原材料:製品の製造に使用する材料
・貯蔵品・消耗品:購入して未使用の消耗品
●棚卸を行う目的
・在庫数量のチェック:帳簿・システム上の在庫数と実際の在庫数を照合、不一致がないか確認し正しい在庫数量を把握し誤りがあれば修正します。
・在庫の適正量の把握:把握した数量をもとに、在庫を過剰に抱えたり不足したりといったことが起きないようにどの時期にどの商品がどのくらい必要なのか判断します。
・在庫品の点検:保有している在庫品の品質・状態を点検することで劣化や損傷があるものを早期に発見し不良在庫がないように管理します。
・利益計算・決算の確定:正確な在庫データを基にして利益計算や決算を確定します。売上高に対する売上原価の計算をして財務会計における利益計算に用います。
このように棚卸を実施することで、在庫を正しく管理し、不足している商品がないか確認することで販売機会の損失を防ぐことができます。在庫の過不足が発見できるため仕入れ方法の改善に活用できます。また、在庫の状態を点検することでトラブルの発生を抑制する効果も期待できます。
●棚卸のタイミング
棚卸資産の管理は、企業の財務状況を正確に把握するために重要な業務です。個人事業主や法人は最低でも年に1度会計期末のタイミングで棚卸を実施しなければなりません。しかし、決算期の棚卸以外は棚卸を実施するタイミングや回数に上限はなく、事業の内容や規模に併せて柔軟に設定できます。棚卸資産の把握は決算のためではなく、日常的な在庫の管理や経営状態の判断の質を高めるために役立つものです。特に商品の回転率が高く、在庫切れが経営に直接影響しやすい飲食業や小売業などでは、月に1度棚卸で在庫を適正に管理しているケースもあります。棚卸では帳簿記載の在庫数と実際の在庫数にどれくらいの差異が生じているかを確かめます。実際の在庫数が帳簿記載の在庫数と異なっていることがあれば原因を追求し修正を実施する必要があります。原因を追求するために時間を要することもあるため、定期的に棚卸を実施することを推奨します。
●棚卸の必要性
企業及び店舗は、財務管理業務において健全な運営のために売上総利益及び純利益などを正確に計算する必要があります。売上総利益の計算は次の通りです。
上記の中の売上原価の内訳は次の通りです。
毎月棚卸をしている場合は以下の通りになります。
従って、在庫数によって決算書に記載される売上総利益が大きく変動してしまうため、棚卸、在庫管理を実施することが重要です。また、月ごとに売上総利益を管理したい場合は、毎月棚卸を実施することにより正確な売上総利益の確認が可能になります。
●まとめ
棚卸資産の管理は、在庫の数量や品質を正確に確認するために欠かせないものです。定期的な棚卸をすることで、不良在庫の早期発見、販売機会の損失防止にも役立ち、正確な売上の把握ができるようになります。棚卸は手間と時間はかかるかもしれませんが、定期的に行うことで帳簿との差異が出た時に原因を発見しやすいというメリットもあります。決算期にまとめて行うと原因究明に時間を要してしまう可能性もあります。その結果、想定していた利益と乖離してしまう可能性もありますので、適切な頻度で棚卸を行うことを推奨します。



