
遊休資産とは、事業用として取得した固定資産が取得時に想定していた事業が変更となったり、用途の変更や新しい機械を購入したりして、何かの理由で利用や稼働を停止している資産をいいます。今回は、遊休資産に係る会計処理についてお伝えします。
1. 遊休資産とは
表題でもお伝えしましたが、遊休資産とは、事業の用に供されていない資産をいいます。例えば、土地や建物などの不動産だけでなく、使わなくなった大型の工作機械、工具器具備品、ソフトウェアなども含まれます。
2. 遊休資産の減価償却方法
会計上、遊休資産も他の資産と同様に減価償却を行う必要があります。その減価償却費は「販売費及び一般管理費」ではなく、原則として「営業外費用」として処理します。それは、遊休資産は営業のために要した費用とは言えないためです。
法人税法上では、「事業の用に供しているもの」が償却資産の要件のひとつとされているため、遊休資産にかかる減価償却は法人税の申告において税務上は損金不算入(費用として認められない)となり申告時に調整する必要があります。
仕訳例として、以下のような処理になります。
例)建物の減価償却費100万円のうち、25万円は遊休資産である。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
減価償却費(販管費) | 750,000 | 建物 | 1,000,000 |
減価償却費(営業外費用) | 250,000 |
しかし、休止期間中に必要な維持・補修が行われており、いつでも稼動できる状態にあるものは、減価償却資産に該当するものとして償却することができます。これを稼働休止資産といいます。
3. 有姿除却とは
遊休資産の有姿除却とは、使用を廃止した固定資産について、廃棄や解体などを行わず、そのままの姿(有姿)の場合でも固定資産除却損として損失計上し、節税することができる方法です。多くは、固定資産の廃棄や解体には相当の取り壊し費用が必要となるため、処分できずに不要な固定資産を抱えている場合があります。有姿除却は、現状の姿のままで除却することができるため、一定のメリットのある手段となります。
ただし、次の要件を満たすものについて有姿除却が可能となっています。(法人税法基本通達7-7-2)
- ①その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産
- ②特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、その製品の生産を中止したことにより将来使用される可能性のほとんどないことがその後の状況等からみて明らかなもの
上記の要件を満たすには、使用価値がないことを客観的に明らかに判断できる資料が必要です。他に転用できる場合は否認される可能性があります。例えば、機械装置の最も重要な部分を破壊するなど、使用価値を喪失したことが客観的に示すことできれば、税務リスクを回避することができるでしょう。
有姿除却は税務上の要件が厳しいため、慎重に取扱う必要があります。
評価損の計上
法人税法では、減価償却資産が1年以上遊休状態にある減価償却資産については、償却不足額を評価損として損金算入できることになります。
法人が評価替えによって資産の帳簿価額を減額した場合には、原則、減額した金額は経費にはできませんが、以下のような場合には時価を限度として評価替えによる評価損の計上が認められます。
- ①災害によって著しく損傷した場合
- ②1年以上にわたり遊休状態である場合
- ③その本来の用途に使用することができないため、他の用途に転用した場合
- ④所在する場所の状況が、著しく変化した場合
- ⑤内国法人について会社更生法等に従って、評価替えをする必要が生じた場合
- ⑥その他特別な事実がある場合
反面、以下のような場合には評価損の計上は認められませんので、注意が必要です。
- ①酷使によって、その固定資産が著しく損耗している場合
- ②償却を行わなかったために、償却不足額が生じている場合
- ③その本来の用途に使用することができないため、他の用途に転用した場合
- ④機械等の進歩によって旧式化している場合
4. 遊休資産を保有するデメリット
遊休資産を減価償却処理や除却処理せずそのまま所持し続けることで次のようなデメリットがあります。
① 固定資産税が毎年発生する
遊休状態であったとしても保有し続けている限り固定資産税や償却資産税が課税されますので、事業活動とは全く関係のない費用が発生することとなります。
② 管理費や維持費がかかる
機械などの場合、メンテナンスが必要な場合があります。建物の場合は管理費や清掃、土地の手入れなど事業とは関係のない費用が発生することになります。
5. まとめ
償却資産とは、事業に使われることによって将来数年間にわたって利益をもたらすものです。遊休資産は、このような価値がなく、減価償却費が損金不算入になるばかりか、固定資産税などの負担も伴ってきます。したがって、遊休資産は可能な限り売却したり、廃棄や解体処分、有姿除却の検討をされるなどしてキャッシュフローの改善を図ることをおすすめします。