
近年、さまざまな「補助金、給付金、助成金、協力金(以下補助金)」などが提供されています。これらの補助金を受け取った時に注意すべき点がいくつかあります。特に、所得税の申告が不要で住民税の申告が必要な場合などあり、正確な情報を理解したうえで適切な対応が必要です。
今回は、「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」をケース事例として取り上げ、補助金を受け取った際の所得税および住民税の申告に関する注意点などをお話します。
1. 補助金の課税対象確認
補助金が課税対象かどうかを確認することが重要です。支給される補助金、給付金、助成金、協力金などは、所得税法などの法令の定めにより、対象者や目的などによって課税か非課税か異なります。補助金の種類や提供元によっては課税対象となる場合や確定申告を行う必要があるので注意しましょう。受け取った補助金が課税対象かどうかや確定申告をする必要があるのかなど事前に確認することでトラブルを回避することができます。
それでは、電気自動車や燃料電池自動車等の需要創出や車両価格の低減を促すことを目的とした「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」を受け取ったケースを例にして考えてみます。
法人や個人事業主の方は、「収入=益金・所得(課税の対象)」と考える方が多いかと思います。個人の方が補助金を活用して車などを購入した時に課税の対象となる場合があります。
個人消費者が補助金を受け取った時、その収入は一時所得と考えます。個人消費者の一時所得に対して課される税金は
(収入金額-特別控除(50万円))×1/2=一時所得に対して課される税金
例えば、CEV補助金85万円を受給したとして、計算をしてみましょう。
(85万円-50万円)×1/2=17万5千円
17万5千円<20万円
となり、給与所得者の方で国からの補助金しか一時所得がない場合には、確定申告は原則不要です。
ただし、地方自治体から補助金を受け取った場合やふるさと納税の返礼品を受け取っている場合には、それらを合算し、合計額が超える場合は確定申告の必要があります。
2. 補助金の使途を明確にする
補助金を受け取った際には、その使途を明確にし、必要な書類や証拠を保管しておくことが重要です。例えば、補助金を使って購入した電気自動車の領収書や契約書を保管し、補助金の使途を証明できるようにしておきましょう。これにより、税務署からの問い合わせに対しても適切に対応できます。
3. 所得税の申告が不要な場合
雇用保険臨時特例法や雇用保険法、生活保護法、児童手当法、児童扶養手当法、被災者生活再建支援法などに基づいて支給される補助金・助成金は、受け取ったとしても非課税となります。補助金が非課税所得として扱われる場合、所得税の申告は不要です。
非課税所得として扱われる主な補助金 | |
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・新型コロナウイルス感染症対応休業支援金 ・新型コロナウイルス感染症対応休業給付金 ・特別定額給付金 ・被災者生活再建支援金 |
・子育て世帯への臨時特別給付金 ・低所得のひとり親世帯への臨時特別給付金 ・学生支援緊急給付金 etc. |
4. 住民税の申告が必要な場合
補助金を受給した時に、住民税の申告が必要な場合があります。住民税は、地方自治体が課税する税金であり、所得税とは異なる基準で課税されることがあります。具体的には、以下のような場合に住民税の申告が必要となることがあります。
- 所得税の申告が不要な非課税所得であっても、住民税の課税対象となる場合
- 所得税の申告を行わない場合でも、住民税の申告が義務付けられている場合
例えば、電気自動車の補助金が非課税所得として扱われる場合でも、住民税の申告が必要となることがあります。これは、地方自治体が独自の基準で課税を行うためです。住民税の申告が必要かどうかは、地方自治体の税務担当部署に確認することが重要です。
また、国庫補助金等が総所得金額から除外されるのは国税のみで住民税は本制度の適用がないため、住民税の確定申告は必要になります。どのみち申告をする必要があるのであれば、確定申告時に明細書を添付して申告した方が良い場合もあります。
5. 申告書に正確に記載する
補助金が課税対象である場合、所得税および住民税の申告書に正確に記載する必要があります。具体的には、確定申告書の「収入金額等」の欄に補助金の金額を記載し、所得として申告します。非課税の場合でも、補助金の受給を記録しておくことが重要です。
6. 必要な控除を適用する
補助金を受け取った時に、適用可能な控除を忘れずに申告しましょう。例えば、電気自動車の購入時に適用可能な控除を正確に計算し、申告書に記載します。これにより、税負担を軽減することができます。
7. 専門家に相談する
補助金の申告に関して不明点がある場合や、複雑なケースの場合は、税理士などの専門家に相談する方法も考えられます。専門家のアドバイスを受けることで、適切な申告ができ、後々のトラブルを避けることができます。
まとめ
補助金を受け取った際には、その課税対象かどうかを確認し、使途を明確にし、正確に申告することが重要です。特に、所得税の申告が不要で住民税の申告が必要な場合には、地方自治体の税務担当部署に確認し、適切に対応しましょう。適切な控除を適用し、必要に応じて専門家に相談することで、税務上の問題を避けることができます。