敷地が狭いと近隣で月極駐車場を契約する場合もあるでしょう。その場合、法人名義または従業員の個人名義かによって経費を「地代家賃」または「給料」とするべきなのか判断が難しくなります。
法人名義の場合と個人名義の場合での処理方法について下記に解釈を示しています。
法人名義の場合
《法人側の処理方法》
法人名義で契約されている場合、業務で使用することが明らかだと考えられますので、原則、「地代家賃」または「賃借料」などといった勘定科目で処理し、損金算入かつ消費税課税仕入れが可能です。
ただし、注意点として、ある「特定の個人」(役員など)などの専属利用の実態がある場合、その個人は経済的利益を享受しているとして支払った地代家賃等の代金は個人の給与として課税される可能性があります。そのため、駐車場の利用について、全従業員に共用駐車場である旨の説明とルールを定めておくと税務調査が行われた場合でも説明できると思います。
《個人側の処理方法》
法人名義で契約されている場合、個人側は金銭の受領も払出もありませんので、個人側に給与課税はされることはありません。ただし、上記のような「特定の個人」に該当する場合は給与課税される可能性があることに留意が必要です。
個人名義の場合
《法人側の処理方法》
実務上、個人名義であっても、業務で使用することが明らかである場合は、原則、「地代家賃」または「賃借料」などといった勘定科目で処理し、損金算入かつ消費税課税仕入れが可能だと考えられます。
ただし、注意点として、「経済的利益の額が著しく多額」の場合は給与課税されることになります。
《個人側の処理方法》
従業員が立替払いしている場合、会社は立替金精算額を支払うことになります。
この精算額は、個人側にとって「給与」または「通勤手当」のどちらに該当するか判断する必要があります。 通勤手当に該当する場合は、原則、非課税限度額までは給与扱いにせず所得税の課税はありません。判断資料として、所得税法施行令第20条の2の「非課税とされる通勤手当」に内容が記載されています。条文にある「自動車その他の交通用具」や「運賃等」という言葉の中には駐車場代が含まれていないと解釈でき、原則として「給与」として扱われ所得税の課税対象になる可能性があります。
ただし、実態が業務で使用しているという合理的な説明が可能であれば、給与課税されないと考えられます。
コインパーキング利用の場合
コインパーキングの利用は少々リスクがあります。実態が通勤を目的に利用していることが税務調査の指摘により判明した場合、「旅費交通費」としては否認され、「給与」として所得税の課税対象とされる可能性があります。また、給与支給額が変わるため、所得税だけでなく従業員個人の住民税や社会保険料等の修正、さらには源泉所得税の納付漏れ、延滞税や加算税が発生するなど影響範囲が広がる可能性があります。対応に留意しましょう。
通勤手当
通勤手当は通勤にかかる費用を会社が従業員に支払うもので、業務上で必要な移動にかかる費用をいいます。主に電車やバスなどの公共交通機関の乗車費用が対象となりますが、自家用車を使用した場合でも通勤手当として支給することができます。通勤手当は原則非課税ですが、自家用車の場合は通勤距離に応じて限度額が定められており、それを超えた分は給与とみなされ所得税や住民税の課税対象となります。
まとめ
通勤手段として自家用車での通勤を選択せざるを得ない場合があります。会社としてはマイカー通勤を条件問わずに認めるのは、駐車場所の確保や手続きなど手間もありますので、就業規則による条件付きで認める方が良いでしょう。万が一、従業員が事故を起こしたりすると従業員本人が賠償責任を負うとともに、会社の責任も問われるリスクがあります。